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「研究会と私」
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2017年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会 長:西戸 伸之










平成元年に診療放射線技師免許を取得した私は,3 ヶ月後には消化管 X 線検査に携 わるようになりました.先輩に「消化管検査をするなら勉強会に参加しなさい.」とア ドバイスを受け,大阪消化管撮影技術研究会には,その年の 12 月から参加するように なりました.
それが私とこの研究会の出会いです. 初代会長であった小川先生のレクチャーは,初心者の私にもわかりやすい内容で, 必死に聴講していました.

症例検討は全くわかりませんでしたが,ベテランの先生方 の白熱した討論に少々怯えていました.特にマクロ・ミクロが出てくると眠くなりま した.それでも,ほぼ毎月研究会に足を運び,ついに読影者に指名されるようになり ました.緊張で声が震え,頭が真っ白になり,全く意味不明な読影をしていたのを今 でも覚えています.

それから 27 年が経ちました.今の私はこの研究会に育てていただ いたと思っています.現在は症例レポートの校正を担当していますが,私が初めて症 例レポート書いた時は,小川先生の校正で,ほとんどの文面が書き直しになりました.

それから何度も症例レポートを書いているうちに編集委員になり,翌年には幹事,本 田会長時に財務担当になり,板谷会長時には W E B 委員長,井上会長時には副会長にな りました.そして,吉本現会長の推薦により今年の 4 月から大阪消化管撮影技術研究 会の 6 代目会長に就任することになりました.本当に私でいいのか?と今でも自問自 答していますが,引き受けた以上,責任を持って今まで以上に努力して参ります.現 幹事,元幹事の方々は勿論,会員の皆様もご協力の程,どうぞよろしくお願い申し上 げます.

この研究会のコンセプトである“救命可能な消化管がんの発見”に加え,「1 人の上 級者よりも 100 人の中級者を育てる」という私の概念も加えた会にして行けたらと思 います.その為には,「教育計画を確立し,毎月参加しやすい会,面白い会,アットホー ムな雰囲気作りと消化管検査が楽しくなるような会」を目指します.

具体的な例会運営については,今まで通り 2 症例の検討を中心に,L e c t u r e の充実 をはかります.新たにミニレクチャーという枠を作り,“明日から使えるテクニック” をテーマに 1 年を通してまずは撮影法について勉強します.通常のレクチャーも内容 のさらなる充実は勿論,エンターテイメント性も強くして行きます.

また,全国には私たちと同じように熱心な消化管検査の研究会があります.その研 究会の方々と一緒に勉強して行ければと思います.講師の派遣や症例の交換利用など も含め,合同研究会の開催などできればと考えています.

最後に,いつも例会運営並びに会誌広告等,ご協力頂いておりますメーカー各位に 深く感謝申し上げます. 今後とも変わらぬご支援をお願いし,就任のご挨拶とさせて 頂きます.


「50 号発刊にあたって」
ー症例レポート外伝ー

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2015年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会 長:吉本 勝










大阪消化管撮影技術研究会の会誌「消化管撮影技術」が 50 号の発刊を迎えました.
第1号の発刊からおおよそ四半世紀の時がすぎましたが,当時の症例レポートに登場する多くの 方々が,現在も例会に参加して頂いていることに感謝致します.
かく言う私は,第 8 号(1994 年)あたりから名前がチラホラ現れる新参者(?)ですが,それでも瞼を閉じると様々な思い出が蘇ってまいります.
今号は記念号の特集として,歴代会長に症例レポートに対する想いを綴っていただきましたが,ここでは私自身がレポーターになった時のことを回想したいと思います.

初めてのレポートは 1995 年 8 月,マクロ上は典型的な未分化型の I I c 型早期癌だったの ですが,X線写真のイメージがこれとは程遠く,シェーマ作成と考察に苦慮した覚えがあり ます.
司会の岩瀬現副会長,その節は大変お世話になりました.

二回目は 1996 年 12 月,陥 凹境界の不明瞭な IIc 型早期癌でした.
この時は,大晦日もレポート執筆のため職場で徹夜 をし,気分転換に神戸の須磨浦山上遊園でひとり初日の出を見たことは涙なくしては語れま せん.

三回目あたりからは段々と慣れてきて,どの位で会風景を仕上げ,シェーマはいつま でに書く.
そして残りは考察に費やすなどと若干の余裕は出てきたのですが,結局のところ 慣れない大腸の症例で苦労致しました.

その後は大御所気分で,もうレポートを書くことは 無いだろうと思っていたのですが,会長就任の決まった 2013 年 1 月に四回目のレポーター を担当しました.
この時は会長就任後にレポーター探しに困った時,「会長の私もやったの だから君もやってよ」の一言を言うために引き受けたようなものですが,自分なりに渾身の レポートが書けたと自負しております.
会長に就任する前は,自分の書いたレポートが真っ赤に添削されて帰ってくるとかなり落 ち込みましたが,現在のレポーターに対して同じことをしているのかと思うと校正の手が緩 むこともあります.

しかし,会誌を通して全国の消化管撮影に携わる方々の目に触れても恥 ずかしくないよう,これからも厳しく校正しますので担当される方は覚悟してください.
最近のレポートはシェーマも美しく大変良くまとまっていますが,ふと物足りなさを感じる時 があります.
理由のひとつは「新しい文献が少ない」ということです.
基礎的な事項は大切 ですから,古い文献を引用することは構わないのですが,新しい文献が無いのは問題です.

その対策として研究会では昨年より胃と腸のデジタル版を契約し,簡単に文献検索ができるようになっていますので,レポーターの方は是非ご活用願います.
また,会誌のなかで小川初代会長が述べられていますが,自分の考えで考察をまとめ,会誌のタイトルに相応しく「消 化管撮影技術」に反映させてもらいたいと思います.

現在,消化管撮影の手順はある程度標準化され,その波は読影方法にも及びつつあります.
市川先生の読影方式と新しい読影方式を fusion させることが私にとっての今後の大きな課 題ですので,会員の皆様もご支援お願い致します.

最後に,いつも例会運営にご協力頂いておりますメーカー各位には本当に感謝申し上げます.
変わらぬご支援を期待しつつ就任のご挨拶とさせて頂きます.


『 共に学ぶ 』
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2013年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会 長:吉本 勝










「胃癌の診断にX線検査は不要か」という衝撃的なタイトルを見かけたのは,1998 年の3月,雑 誌「胃と腸」vol.33 No.4でした.
当時,現役でバリバリと消化管X線検査を行っていた私にも,病院施設における消化管検査の主役の座が内視鏡検査に移行していることは肌で感じていましたが,いざ活字となって目の前に突きつけられると心中穏やかではなかったことを思い出します.
あれから15 年経ちますが,バリウム検査は無くなったのでしょうか.否,病院施設においてスク リーニングとしての消化管X線検査の件数は多くはありませんが,術前精査として今も確固たる 役割を担っています.
何よりも検診機関においては,以前にも増してX線検査が施行され続けているではありませんか.その理由は何なのでしょうか.
内視鏡検査のスループットの低さや,受 検者のアレルギー感情も原因の一つでしょう.医師不足で検者のマンパワーが足りないことも大きな問題です.ABC 検診など新しい検査も開発されましたが,解決しなければならない問題を多く 含んでいます.

 これらのことをふまえると,消化管X線検査はまだまだ無くならないと確信しています.でも 誤解しないで下さい.私は,消化管X線検査が安泰で良かったと申し上げているわけではありません.
実際,私自身が経鼻内視鏡検査を受けた時,思いのほか楽であったことより,近い将来内,視鏡による集団検診が選択肢のひとつに加われば良いとさえ考えました.

 このように目覚ましく進歩する内視鏡検査と共存するために,消化管X線検査には従来以上の精度が求められるのではないかということです.
一昨年より N P O 法人日本消化器がん検診精度管理評価機構主催の技術部門B検定が施行され,全国統一の基準撮影法が軌道に乗りはじめました..
しかし,これは最低限の撮影法です.我々消化管X線検査に携わるものはこれに満足せず,更なる高みを目指してゆかねばなりません.そのためには日々の努力が必要であり,我々の研究会が その一助になれば何よりの幸いです.

 さて,今春より私は,大阪消化管撮影技術研究会の5代目会長に就任することとなりました.
そこで皆様へのお願いです.現在,研究会には毎月多くの先生方にご出席頂いていますが,まだ まだ積極的にプログラムに参加して頂いているとは言い難い状況です.
もちろん我々提供者側にも大きな問題があると反省しています.例えば,症例検討用の症例が手に入りにくく,充分な検討が出来ない時など本当に申し訳なく思います.
しかし,この研究会は皆様と共に作り上げていく会です.技師による読影の補助に向けて症例検討を行い,より多くの病変を見つけるために撮 影法を学びたいと考えています.
写真を持参して頂いてディスカッションしても良いでしょう.皆様のご希望をお聞かせ下さい.消化管X線検査の未来に向けて共に学んでいきましょう.

 最後に,いつも例会運営にご協力頂いておりますメーカー各位には本当に感謝申し上げます..変わらぬご支援を期待しつつ就任のご挨拶とさせて頂きます.


『 感性を豊かに 』
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2012年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

書 記:丹羽大輔










 我々診療放射線技師が日常の業務で行っているX線撮影において,診断価値の高い画像を撮影するには技術力の高さは勿論のこと,感性・感覚などの能力も必要ではないかと思っています.たとえば、病変などをはっきりと写し出すにはポジショニングの確かさなどの撮影技術力だけでなく,絵を描くことと同じように感性や美的センスといった能力も重要な要素だと思います.消化管の撮影では病変を写した写真と病変が写った写真とは違うとよく言われます.しかし,写した写真であってもバリウムの流し方や撮影体位,空気量などにより出来上がった写真は微妙に異なり,術者の感性やセンスを肌で感じ取ることが出来ます.病変をただ写しただけでなく,その病変の性状を判別できるような写真を撮影する能力,ちゃんと写した写真を撮影出来る技術やセンスを我々は磨く必要があると思います.

 感性について辞典を調べると,「美や善などの評価判断に関する印象の内包的な意味を知覚する能力」,「物事を心に深く感じ取る働きを意味し,そして感じ取ったものに関係性や意味性を生み出し,創造性を展開していく能力」であると書いてありました.感性を磨くとは,絵を描いたり本を読んだり,または本物のものに接したりすることによって,ひとつの対象を当たり前に受容せず,意識的に取り入れたりすることで,いろいろな経験を通じて比較対象となる要素を増やし発想などの幅を広げ,物事を見る目を鋭くすることが出来ると聞いたことがあります.これを消化管撮影に当てはめて考えてみると,病変を読み取る能力や病変を写し出す高い撮影技術力だけでなく,病変を病変として誰もが認識出来るような表現力も身に付けることだと思います.消化管撮影は造影検査であると言われる所以です.

 当研究会では常々,読影力の向上が撮影技術の向上に繋がるという考えのもとに活動を続けてまいりました.毎月の例会において知識の向上,読影力・撮影力の向上などについて数多くの症例から学ぶことが出来ます.知識・技術だけでなく,実際に症例に接したり,これまでとは違う観点から症例を見てみたり,症例から何かを感じ取って頂くことで,創造性に優れ,感覚が研ぎ澄まされた能力を併せ持った消化管撮影の担い手となれるよう共に学んでいます.消化管造影検査が今後も生き残っていくためには,撮影技術の向上を計り,検査の精度を高め,診断価値のある画像を提供するとともに感性が豊かで幅広い視線から消化管撮影と向き合うことが,研究会の目標でもある“一人でも救命可能な癌の発見”にも?がり,ひいては消化管撮影の未来に繋がるものと考えます.

 最後になりましたが,平素よりご支援ご協力をいただいております各メーカーの方々に深く御礼を申し上げますとともに,諸先生方にはよろしくご指導ご鞭撻の程お願い申し上げます.


『 大阪魂! 』
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2011年10月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

財 務:朝日和也










  笑いと商人のまち大阪に会が発足してから約25年,大阪消化管撮影技術研究会は5月例会におきまして開催300回を迎えることができました!大阪はもちろん関西そして全国の会員の皆様と沢山の先輩方の御努力によりこの会が運営されてきたことは,現在,会運営に携わる一人として尊敬の念を抱かずにいられません.

 現在の研究会運営は毎月の例会,会誌,ホームページと多岐にわたります.手前味噌ですが,この一つ一つの会務を円滑に行うため会長を中心として各幹事が役割を分担し,献身的な作業により研究会が運営されています.今回私は財務担当者として,近年の研究会の会員構成や会の運営について迫ってみたいと思います.

 研究会の活動を支えているのは,例会時の参加費,年会費と会誌の広告費です.参加費は私が担当してから参加者人数に大きな変化はなく,安定した会運営の源となっています.逆を考えますと,参加者が大幅に減ると会運営が厳しくなるといえます.
 
 現状では,私が参加を始めたときに比べますと継続して参加される方よりスポット的に気になる内容のときだけに参加される方が増えているように思います.

 また,当会には例会には参加しない会員(以下→ネット会員)がいます.何かの機会で当研究会を知り,ホームページにアクセスして会員になられる方です.ネット会員として長年継続される会員もおられますし,近年,新規に会員になられる方もおられます.特にここ数年は例会参加者,ネット会員共に継続的な会員よりも新規に会員になられる方が増えてきています.理由は何かハッキリとは解りませんが,消化管検査を取り巻く環境の変化にあるのでしょうか?一つ理由とし考えられる事は研究会も25 年を経過し,第一線で消化管撮影に携わっていた方々が現場を離れて,新しい若い世代が消化管撮影を担うようになってきているということではないかと思います.新たに消化管撮影を始める世代が増えれば,研究会も従来の内容にプラスして初心者が理解しやすいテーマや表現を再度取り入れていかなければなりません.そうすることで研究会の目標である“一人の名人よりも,百人の中級者の養成”が達成できるのだと考えています.そのために会長はじめ各幹事たちは日頃から学会・他研究会などに積極的に参加し新しい話題・トピックスなどを取り入れ,会に還元する努力をしております.

 消化管撮影全体の底上げは研究会の大きな使命であります.NPO 法人日本消化器がん検診精度管理評価機構のB認定試験も行われました.関西でもたくさんの方が受験されたと聞いています.消化管撮影の新しい時代が始まりました!大阪から常にひと味違う,情報と情熱を全国に発信していくことで新しい時代を先導し,消化管撮影全体の活性化に貢献できると思っております.これからも消化管検査が必要とされる未来に向かって頑張っていきましょう.

 最後になりますが,会誌広告,会運営に御支援,御協力いただきます,メーカー各位に深く感謝申し上げますとともに,諸先生方におかれましてはより一層のご指導,ご鞭撻をお願い申し上げます.


『 胃]線検査の新たな可能性を視野に入れて 』
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2011年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会 長:井上清輝










 近年,ピロリ菌感染が胃がん発症において密接に関与していることは周知の事実であり,今までは加齢とともに胃粘膜の萎縮が進むことも当たり前のように考えられていましたが,ピロリ菌感染による炎症の程度により萎縮が進行し,感染のない場合はいつまでも若く萎縮のない胃粘膜のままであるというような愕きの事実となっています.ピロリといえば,当研究会でも平成22年度の8月特別講演において「ヘリコバクター・ピロリ時代の胃]線造影診断」と題して,奈良県立医科大学病院の伊藤高広先生にご講演を頂いたことは記憶にも新しく,伊藤先生はこの中で胃]線検査でも粘膜ひだや胃小区またはバリウムの付着状態からピロリ菌感染の有無と萎縮度を判定することが可能であるということを述べておられました.この講演をきっかけに,胃]線検査をもう一度見直す時期が訪れたと感じられた方も多いのではないでしょうか?

 さて,最近私が購入した消化管検査に関連する書籍があり,それは「胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル」という胃がん撲滅のための手引きで,NPO法人の日本胃がん予知・診断・治療研究機構より出版されています.その内容とは,血清抗体でピロリ菌感染の有無を,血清ペプシノゲン値で胃粘膜の萎縮程度を調べることにより,胃がんになりやすいかどうかのリスク(危険度)を判定することを目的に,高危険群〜低危険群の4段階に層別化することを一次スクリーニングと位置付けしています.

 さらに,現行の全受診者に対する逐年検査の実施を改めるために,一次スクリーニングより得られたリスクに応じた二次検査(精密検査)の実施とその間隔(例えば,3年間隔や隔年実施など)を決定するという試みが記載されています.この中では,一次スクリーニングにより危険群となる対象を集約したうえで,二次検査は内視鏡で実施することを提唱しています.また,厚生労働省においてはピロリ菌感染などを考慮した検診については研究班で評価を始めたばかりであるとはしていますが,NPO法人の研究機構には厚生労働省の主任研究者の方もおられることなどから,このリスク検診が全国的に採用されることになった場合,現在の胃]線検査はどうなるのであろうか?…と考えます.

 ただし,このリスク検診が採用された場合は2回の受診が必要となりますが,前述しましたように胃]線検査においては,1回の検査で背景粘膜の状況よりリスクの判定と病変の検索が同時に可能です.胃]線検査による確実なリスク判定が可能となれば,現行の逐年実施を回避することができ,コストや被曝面等も含め受診者にとっては更に優しい検査に繋がることは間違いないと考えます.

 胃]線検査による新たな可能性を視野に入れ,これからは胃]線画像とリスク判定が単純に1対1として対応できるような基準の作成と裏付けに向けて取り組むことが,胃]線検査の生き残りに繋がる一つの方法であると考えます.

 益々,厳しい医療業界ではありますが,今後ともメーカー各位におかれましてはご支援,ご協力をお願いするとともに,諸先生方にはより一層のご指導,ご鞭撻をお願い申し上げます.


『 情報社会の中で 』
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2010年10月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

副会長:西戸伸之










 驚くような速さで情報通信技術が発達し,ブロードバンド化されたインターネットが,ネットワーク社会を構築しました.その結果,今日では“いつでも,どこでも,誰でも”必要な情報を集めることができる情報社会となっています.
 
 大阪消化管撮影技術研究会では,まだ不安的要素が強かった10年前にホームページを開設しました.当時会長に就任したばかりの本田元会長の,「会運営の今後を踏まえた上で,地方の会員のためにもホームページを開設したい.」という意向により,すぐにWEB管理委員会が立ち上げられ,まず内容の検討からとりかかりました.前例がないことでもあり,どこまで公開をしていいのか?法的にはどうなのか?個人情報は?セキュリティは?費用は?問題が起こったときの責任の所在は?などさまざまな事柄の話し合いに半年以上かけ,2000年4月にようやくホームページを公開する運びとなりました.
 
 当初は,“地方会員の為”というのが最大の理由でしたが,地方会員でなくても例会でゆっくりと症例画像を見ることができなかった場合や欠席した時など,“いつでも,どこでも”ホームページを活用することができます.さらに,月末にはメールマガジンが発行され,症例検討の集約された内容や読影者のコメントなども見ることができます.それに加え,会運営の沿革としても有用であり,今では重要な会の財産になっています.私も時折,活動風景のページを見て,「10年前はみんな若かったなぁ〜.」とか,「K氏だけは全く変わってないな〜.」などと物思いに耽ることがあります.
 
 開設当初は,「最低10年はやり続けること.毎月必ずページの更新をする.」を最低限の目標としました.その為に,今で言う“ガバナンス”を構築し,各担当者がそれぞれ主体的に関与し,委員の合意の元にメールで決定するという管理運営をしてきました.そして,10年間続けることができました.これは個性あふれ,力量のあふれる委員の方々の賜物であり感謝しています.毎月滞ることなく,読み応えのあるコメントの作成や例会中の画像の撮影,症例画像の取り込み,ページの更新など,自分の役割を毎月キッチリと成し遂げてくれたからです.勿論,最終的な決定,校正など責任を持って対応して頂いた本田元会長や板谷元会長(現相談役),井上現会長,そして,幹事や会員の皆様方の全面的なサポートがあったからであり,この場にて厚くお礼を申し上げます.
 
 今では,年平均のネット会員数は150名を超え,会員数の65%以上を占めるようになり,会運営に必要なコンテンツの一つとなりました.例会並びに会誌と連動しているということは言うまでもありません.また,関西圏以外の会員は60数名に上り,限定ページにある症例数は,すでに200症例を超えています.ネット会員登録されていない会員の皆様も,この機会に是非登録してホームページをご活用ください.

 これからも,大阪消化管撮影技術研究会の「救命可能な癌の発見」という目的の達成のため,幹事,委員は勿論,メーカーや会員の皆様方,一緒に頑張って行きましょう!

 これまで,多くのご援助を頂きました皆様,各メーカーの方々に厚くお礼を申し上げますと共に,今後も一層のご支援をお願い申し上げます.


『 標 準 化 』
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2010年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

副会長:吉本 勝










 診療放射線技師となって24年,勤務先が総合病院ということもあって数多くの検査に携わってまいりましたが, 消化管X線検査には特別な思い入れがあります.そもそも消化管X線検査との出会いは,技師学校時代に現像のアルバイトで 個人病院に勤務していたときに遡ります.夜診のみの勤務であり,骨のX線撮影が多かったのですが, たまたま胃のX線検査があった時に大きな衝撃を受けました.リアルタイムに変動するバリウムの流れに応じて撮影していたこと, 撮影角度は透視画面を見て個別に判断していたこと,同じ写真は二度と撮れないこと,何よりも二重造影像により写し出され た粘膜面がとても美しかったことが印象的でした.それまでCTやMRI,放射線治療といった高度な機器を使用することが エリートの技師だと思い込んでいましたが,古臭い透視装置で得られる胃のX線写真がなによりも魅力的に見え, この技術を絶対に自分のものにしてやると心に決めたのです.それが長年,この仕事に携わるようになる原点なのです.

 そもそも消化管X線検査の面白みとは何なのでしょうか?それは術者の技量や経験により, 得られる画像(情報)が大きく異なる点ではないでしょうか.適切な表現ではないかもしれませんが, 病変を描出するという点においては芸術的な要素も大きいと思います. ところが,数年前より他のモダリティーに携わるようになって,検査というものはそれだけではいけないのではないかと 考えるようになりました.誰が行ってもある一定以上の結果が得られるものでなければならない.そうでなければ,いずれ 他のモダリティーに淘汰されてしまう.これを防ぐためには標準化というものが必要であり,多少強引であってもそれが検査 レベルの底上げにつながるのだと考えるようになりました.私は昨年よりNPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構 (以後NPO精管構と略す)の基準撮影法指導講師の仕事をさせていただいています.自分の行ってきた検査とのギャップ, 指導していく上での迷いもありますが,消化管X線検査を今後もスタンダードな検査として位置付けるためには大事な仕事 であると考え,取り組んでいます.

 平成23年度よりNPO精管構による胃がん検診専門技師認定試験が開催される予定であり,皆様の中にも深い関心をお持ちの方が おられることでしょう.現時点では未定の部分も多く,お伝え出来ることは限られていますが,今後少しでも会員の皆様に 情報を提供できればと考えています.消化管X線検査の未来に向けてともに頑張りましょう.

最後にお忙しい中,例会における受付,案内資料の配布等の各種業務,また,会誌刊行などの研究会活動にご協力いただい ております各メーカーの方々に感謝申し上げます.


『就任のご挨拶』
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2009年6月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:井上清輝










大阪消化管撮影技術研究会は,会員の皆様,そして歴代の会長をはじめ幹事・メーカー各社のご尽力・ご協力により, 確固たる基盤を築きあげられ,今や大阪を代表する研究会であることは周知のところであります.わたくし自身, この研究会の会長に就任することとなった以上は,更に大阪色を全国にアピールし,研究会を盛り上げていきたいと考えております。

 年月が過ぎるのは早いもので,当研究会の幹事に就任して,いつの間にか10年,副会長として6年間の計16年間お世話になっており, この間に会長の交代が二度あり,研究会創立当初の小川利政先生から本田幹雄先生をはじめ板谷充子先生へと至るまで,研究会のために 全力投球されてきた歴代諸先輩方の末席に連なるということを思いますと,その責任の重さを痛感しているのが現状であります.

しかし,研究会自身がパワーアップされ,現在に至っては幹事それぞれが消化管への情熱と直向きな努力の積み重ねにより, 司会・レクチャーなど,会員を魅了するほどになっていると常々実感しております.この状況の中で,会長として行うべきことは いったい何かと考えた場合,研究会として今後進むべき方向性を明確に示し,幹事一丸となり邁進することにあると考えております.

研究会では,会員の皆様を中心とした運営を常に考え,今後もこの姿勢を崩さずに取り組んでいく所存であります.また,初代会長から のお言葉である「一人でも多くの救命可能な胃がんの発見」を継承することが使命であり,この言葉を実行するために, 日常消化管の撮影・読影に携わっている多くの放射線技師の皆様に当研究会の活動を知って頂き,少しでも刺激となることで, 全国で年間約1560万人(20年度の全国へのバリウム出荷量より算出した受診者数)と予想される検診(健診)を受診される方々に対し, 貢献することができればと考えています.

また,毎月の定例会にて繰り広げられる消化管に対する熱き思いをホームページやメール マガジンにより,例会には参加できない全国のNET会員の皆様にメッセージとしてお伝えするため努力していく所存であります.

医療業界においては,ますます厳しい状況ではありますが,どうか今後ともメーカー各位におかれましては相変らぬご支援, ご協力をお願いするとともに,諸先生方にはより一層のご指導,ご鞭撻をお願い申し上げます.


『期  待』
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2009年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

相談役:板谷充子










 NPO 法人日本消化器がん検診精度管理評価機構がいよいよ大きく動き出しました.一昨年の夏に 胃X線精度管理研究会の代表である細井董三先生が当会特別講演の中で,熱く語ってくださった のですが,その年の会誌に私は細井先生の研究会の活動について消化管造影検査が生き残るため の,最後の砦と書きました.そして,昨年の11 月に待ちに待った基準撮影法が発表され,「胃が んX線検診 基準撮影法マニュアル」ドラフト版という形で公表されました.そこでは,これか らも改良を加え進化してゆくと明言されています.直接撮影の基準撮影法については今までなか なか手をつけられなかったのですが,ついにそれが実現したのです.これまでの経緯は,昨年8 月特別講演で早期胃癌検診協会の吉田諭史先生が,またつい先日の2月特別講演でも早期胃癌検 診協会の木村俊雄先生が胃精度管理評価機構と新しい撮影法について講演してくださったのは記 憶に新しいところです.

 さて,実際にこの撮影法を見たとき,長い間消化管撮影に携わってきた人ほど,最初は戸惑い があるのではないかと思います.しかし,その基準撮影法に込められた強い意志に気づいたとき, この撮影法にかける多くの先輩方の思いが理解できるように感じます.私にとりましても,長い 間の念願であった施設健診などの直接撮影で食道撮影が基準として加わったことは,消化管造影 検査の更なる信頼を高めるものであると考えます.また,この基準はあくまでも最低レベルと位 置づけられています.つまり食道も含めこれだけの撮影を最低限クリアーすることがこれからの 検診(健診)にも一般の病院での検査にしても求められるのです.ただ決められた体位で撮影す れば良いのではなく,基準を満たす撮影が求められているのだということが,今後どれだけ大き な効果をもたらすかは計り知れないことだと思います.消化管造影検査は病院では消滅したと言 われながらも,胃癌検診や人間ドックでは今なお年間700 万人を越える受検者がおられます.そ の仕事は私たち放射線技師が力を発揮できる分野であることは明確です.10 年後も20 年後も恐ら く消化管造影検査は消滅することなく国民の健康を支える柱となり続けるに違いありません.そ れを可能にするのがN P O 法人日本消化器がん検診精度管理評価機構の活動であり,この基準撮影 法であると確信いたします.

 最後に,本田前会長のあと4年間会長を務めさせて頂きましたが,このたび新会長として井上 清輝副会長にバトンタッチを致します.諸先輩や本田相談役をはじめ,素晴らしい会の仲間達に 支えられこれまで無事に会運営ができましたことを感謝いたします.今後は指導力あふれる新会 長のもと,大阪消化管撮影技術研究会の更なる発展と飛躍を期待しています.これまで,多くの ご援助を頂きました皆様,各メーカーの方々に厚くお礼を申し上げますと共に,新体制へのより 一層のご支援をお願い申し上げます.


『自覚を持って!』
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2008年10月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

副会長:岩瀬純教










 最近,痛ましいニュースを目にすることが多くなりました.普通では考えられないような事件 が起きています.原因は社会や人への不満,ストレス等さまざまですが,理性や感情の抑制とい うものはないのでしょうか.寂しい世の中だと思います.人は決して一人では生きていないし, 生きてはいけないものだと思います.

 「出会い3 秒」という言葉があります.この3 秒間で相手に受け入れてもらえるのか,拒まれる のかが大きく左右されます.皆様の身近にいませんか.仕事は出来るが無愛想で取っ付きにくい人, 逆に仕事はパッとしないがニコッとして憎めない人.本人は意識していないとは思いますが,第 一印象の違いで緊張感は大きく異なります.消化管検査の場合はどうでしょうか.健診の受検者 には緊張感を持ってもらった方が,蠕動運動の抑制にはなると思います.しかし,自覚症状をお 持ちの受検者や患者様は,自分は何か悪い病気ではないだろうかと不安を抱えて検査に来られま す.そんな時には「出会い3 秒」を試してみましょう.口角を少し上げ,営業スマイルで十分です. 軽くお辞儀をしながら相手の目を見て,「おはようございます」「こんにちは」「お待たせいたしま した」などこちらから声をかけることで緊張感がほぐれスムーズな検査が行えるのでないでしょ うか.その後は思いやりの心,気遣い,親切心など,ちょっとした仕草や言葉で相手に接することで, 受検者・患者様が安心され気持ちよく検査を受けていただけるのではないかと思います.また, 検査終了後も「お疲れ様でした」「ご協力ありがとうございました」など,労いや感謝することを 忘れてはいけません.こういったことは,各施設で通常に行われていることだと思います.しかし, 日々検査に追われていたり,その日の気分でついついおざなりになったりしていませんか.今一度, 鏡に向かって微笑んでみてください.これらを意識して行えるようになれば,検査を受けて良かっ たと思ってもらえるのではないでしょうか.小さなことではありますが,今努力しておかなければ, 受診離れや精度悪化などを来たし,今後ますます消化管撮影の必要性がないと烙印を押されてし まうのではないかと心配です.

 私たちの研究会がすべきこととして,諸先輩方が築いてこられた消化管撮影技術は勿論のこと, 接遇を含めた人材育成や教育・技術研鑚の場を提供して,多くの仲間と語り合える環境を守るこ とではないかと思います.実際には毎月の例会参加者がピーク時の半数以下にまで落ち込んでい ます.その代わりといっては過言かもしれませんが,遠方で例会には参加できないが,ネットで の症例閲覧や会誌の発行,一泊研修会を楽しみにしておられる方もいます.そういった熱き心を 持った方々の多くが,この研究会を支えて下さっています.コミュニケーションの修練,知識向 上の場として研究会(例会)は最高の環境ではないでしょうか.数多くの症例に接し,討論する ことは何よりの勉強法だと思います.プロとしての自信をつけ,自覚を持って検査に望みたいも のです.
 最後に,平素より研究会を応援してくださいます,皆様方,各メーカーの方々へお礼を申し上げます.


『バリウム検査で生き残りを目指す!』
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2008年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

副会長:井上清輝










 病院・施設での胃X線検査(以下⇒バリウム検査)は軒並み減少の一途を辿り,今では健診施設でのバリウム検査のみであるといっても過言ではない状況であります.その健診 施設においても受診者からの要望が多くなり,胃内視鏡検査(以下⇒内視鏡検査)の選択を可能として導入している施設が約半数以上あることも事実です.

 当施設においても内視鏡検査導入を検討した時期があり,その時バリウム検査に対する意識調査を行った経緯があります.その内容は,「今までに内視鏡検査(胃カメラ)を受けたことがありますか?」「当施設での胃検査はバリウムで行っていますが,内視鏡検査とバリウム検査を選択することが可能であればどちらを選択されますか?」・・・という ものでした.結果は,内視鏡検査希望が31%,バリウム検査希望が40%,残りの29%はどちらでも良いでした.意識調査において意外であったのは,予想以上に内視鏡検査を受けたことがある受診者が多かったことです.希望する検査法の選択理由としては,内視鏡検査を受けて苦しい思いを経験した場合は,次回にはバリウム検査を要望し,内視鏡検査 が楽に受けられた場合は,再び内視鏡を要望するというように,苦しく辛い検査は受け入れられないのが健診施設の現状であると考えることが大切です.この調査結果をどのように受け止めるかが重要で,この結果の中にバリウム検査の生き残るヒントが隠されているように思うのです.

 内視鏡検査においては,N B I システムの開発や経鼻内視鏡など日進月歩の向上がみられます.では,バリウム検査はどうかというと,高濃度低粘性バリウムの開発がありますが,これだけでは楽な検査とはなりません.そこで,撮影する側として,今何を考えなければいけないのか?接遇対応の良さは必須です.また,優しさ・思いやりも欠かせないでしょ う.撮影技術は当然必要です.撮影される側にとって撮影技術はあってあたりまえで,何よりも苦痛のない検査を望んでいます.そのためには今,バリウム検査に係わるすべてを見直すことが必要であると考えます.それは発泡顆粒やバリウムであり,撮影時の体位変 換や頭低位等々です.バリウム検査は多くの苦痛が重なり合った苦しく辛い検査です.この苦しく辛い検査を少しでも楽な検査に変えるために,もう一度バリウム検査を見直そうではありませんか.

 最後に,平素より研究会を応援してくださいます,皆様方,各メーカーの方々へお礼を申し上げます.


『新しい出発のとき』
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2007年10月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:板谷充子










 8月例会において特別講演を頂いた,霞ヶ浦成人病研究事業団センター長 細井董三先生が代表を務められる「胃X線検診精度管理研究会」が,7月1日に総理府よりNPO の承認を受けられました.これまでも多くの先生方や研究会が,衰退の一途といわれる消化管造影検査のために様々な努力をしてこられましたが,その流れを止めることはできませんでした.しかし,今回のNPO 法人承認をきっかけに全国の消化管に携わる医師も技師も再びこの「胃X線検診精度管理研究会」の活動に集結し力を注いで頂きたいと思います.

 細井先生は研究会の設立趣意書に“新・胃X線撮影法”によりその有効性が各方面からも評価を得ていると書かれています.1998 年に出された「がん検診の有効性評価に関する研究班報告書」でも,胃がん検診の有効性は疫学的に強く示唆されているとの記載があります.また細井先生は,先日の特別講演において,全国の自治体などで胃の検診を受ける人たちは消化器がん検診学会の把握する580 万人をはるかに超える700 万人近くではないかと話されていました.では,その膨大な数の検診は誰が撮影や読影を担っているのでしょうか.今,消化管の読影をされる医師が極端に減少しています.大学でバリウムスタディーを教える医師がいないともいわれています.しかし,全国ではこれほどの数の検診が毎日行なわれているのです.それに伴う責任は,誰が担うのでしょうか.制度上の,あるいは経済効果なども踏まえた再検討が必要ではないかと思います.

 2年ほど前に私はこの稿で「共通の言語」という拙文を書きました.そのときはマンモグラフィの認定技師の試験を経験し,精度管理のあり方について感じたことを書かせて頂きました.マンモグラフィには,読影する医師と撮影する技師の間にカテゴリー分類に代表される「共通の言語」が存在します.では,消化管は如何でしょか?マンモグラフィのカテゴリー分類に匹敵するような「共通の言語」があるのでしょうか.そのことも含め,今回のNPO 法人承認により,新しい出発をされた「胃X線検診精度管理研究会」に対し変化への期待を寄せるのは私ひとりではないと思います.皆で力を合わせて「二重造影法」に代表される,日本の消化管造影検査の真価を取り戻そうではありませんか.

 私事ですが,この春長く勤務致しました(財)みどり健康管理センターを退職し,医療法人友紘会 彩都友紘会病院というがん治療に特化した新しい病院で,地域医療連絡室という新しい職種にチャレンジする機会を頂きました.今までとは違った角度から医療とかかわることに大きな期待を持っています.今後ともどうぞよろしくお願い致します.


最後に,平素より研究会を応援してくださいます,皆様方,各メーカーの方々へお礼を申し上げます.


『食道癌(もったいない理論の展開)』
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2007年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:板谷充子










 がん集団検診を行なうための8条件として,1:重要性,2:効率性,3:治療効果,4:安全性,5:測定能力,6:有効性,7:経済性,8:総合純利益があり,この中でも@重要性の内容として,罹患率・有病率・死亡率の高いがんであることが第1 条件に挙げられている.1998 年に出された「がん検診の有効性評価に関する研究班報告書」(主任研究者 久道茂)では,胃がん検診の有効性は疫学的に強く示唆され,2001 年の第3版でも有効と記載されている.つまり有効性は認められているということである.胃がん検診の年間の受診者数は減少しているといいながらも,平成16 年度消化器がん検診全国集計によれば,直接・間接を合わせて5,859,697 人である.一般病院の外来ではまず選択されることがなくなった消化管の造影検査であるが,年間580 万人以上の方々が現在もバリウムによる検査を受けているのである.対して内視鏡検査による胃がん検診の受診者数は93,909 人である.同じ統計によると,食道集検の受診者総数は500,376 人であり,胃がん検診の約10 分の1の人数である.

 日本人の食道癌については,罹患率・有病率・死亡率などは胃がん,肺がん,大腸がんなどに比し少ないことから,集団検診の対象からは除外されている.しかし,年齢別に見た食道がんの罹患率,死亡率はともに40 歳代以降に増加し,特に男性では女性に比べ急激に増加する.男性の罹患率,死亡率は女性の約5倍といわれている.確かに前述の8条件に照らすと食道癌は罹患率も低いし,バリウムスタディーでは発見率も低いと考えられ,検診の対象にはなりえなかったのかもしれない.せっかくバリウムを飲む検査であるにもかかわらず,食道は検査の対象外とされて,透視観察も撮影も行なわれていないのが現状ではあるまいか.これでは,発見できる機会をみすみす逃しているのではないかと思われても仕方ない.

 そろそろ考えを改めるべき時期なのである.なぜ今になって胃の集団検診における精度管理の必要性が声高に叫ばれるのか?これまで検診の効率性ばかり追いかけてきた結果ではないのか.内視鏡をはじめとする他のモダリティーに胃がん検診を任せるにはあまりにもマンパワーなどに違いがありすぎる.いろいろ言いながらも胃がん検診は継続されているのである.また,それに加えて最近ではD R 装置の解像力の高さはアレア単位を超えてピットの描出も可能であると言われている.更に,バリウムも非常に描出能力の高い品質のものが出てきた.先日の日本総合健診医学会でもD R 装置による画質が話題になっていた.かつて食道がんは発見されても進行癌といわれ ていたが,今はm2,m3 だけでなくm1 さえも可能かもしれない.限界かと思っていたバリウムスタディーだがまだ限界は先にありそうである.ただし,胃がん検診に携わる私たちが声をあげ,改革を行なわない限り変化は望めない.胃がん検診にも食道の撮影を取り入れることを提案したい.せっかく飲むバリウムを無駄にせず,せっかくできる検査を棒に振るのはあまりにももったいないと思うのである.

 最後に, 平素より研究会を応援して下さいます,皆様方,各メーカーの方々へお礼を申し上げます.


※ M O T T A I N A I・もったいない運動:2004 年にノーベル平和賞を受賞したケニア出身のワンガリ・マータイが環境問題の基本精神として世界に広めている考え方.


『実力と経験年数』
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2006年10月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:板谷充子
みどり健康
管理センター










 “Dose he have 17years of experience or on year experience 17times”ある日ふと目に留まった言葉でした.出典は不明ですが,ホール・R・ウィゼンフォルトと名前が書かれて いました.もちろん私は英文の言葉で理解できたのではなくて,その下に書かれていた解説がとても心に残ったのです.そこには,「経験年数の長さは,その人の能力を判断する基準にはならない・・・,いくら長い経験年数や経験回数が多くても,考えることをしなくては,進歩も発展もありえない.」というような意味のことが書かれていました.今から15年位前のことなのですが,ちょうどその頃は自施設の撮影法を改善するために色々悩んでいたときでした.その文章を読んだときに,消化管造影検査そのものではないかと感じたのを今でも鮮明に覚えています.いくら長い経験年数があっても,駄目なものは駄目なのかと思ったのです.私自身も例会で提出される精緻な精密検査の画像を見るたびに,何故こんな写真が撮れないのだろう,
撮影技術にもセンスが必要なのだと悩んでいました.

 消化管造影検査の技術力は人によって大きな差があります.ただ,決められた撮影体位を決められた枚数だけ撮影するという人もいれば,よく見つけ,よく描出することが当たり前のように出来る人もいます.その違いは経験年数とは関係なく歴然と日々の撮影結果に現れます.そこで気づいたのは消化管撮影の経験年数と技術力は正比例ではないということでした.たった2〜3年の経験年数しかない若い技師でもメリハリのある見事な写真を撮影できる人もいます.その違いは何処にあるのでしょうか.うまく表現できないのですが,少しでも良い仕事をしようという意識に他ならないと思うのです.そのためには,月並みですが日々努力すること,考えることが必要です.

 消化管造影検査は撮影する技師にとっても,決して楽な検査ではありません.良い写真を撮るためには,疾患に対する知識,自分の技術,そして受検者への気遣い,それらがマッチしなくては撮影はうまく行きません.ただ,ポジショニングして,曝射すれば誰でも同じ写真が撮れるわけではないのです.その違いに気づいたときから努力が始まるのだと思います.研究会にはそれこそ年配者から若い新人の技師まで多くの熱心な方々が来られます.成書を読んでもどこにも書かれていないものを研究会の場で学ぶこと,症例を経験すること,参加してはじめてそれらが実力へと繋がるのだと思います.消化管造影検査の灯が消えないように,受検者が選択してくれる検査であり続けるためにもより一層頑張りたいと思います.

 最後に,平素より研究会を応援して下さいます,皆様方,各メーカーの方々へお礼を申し上げます.


『共通の言語』
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2006年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:板谷充子
みどり健康
管理センター










 最近医療における精度管理といえば,必ずマンモグラフィ検診精度管理中央委員会(以下,精中委と略)がお手本として挙げられます.その認定技師の資格取得のために勉強する過程で,確かにそれにはそれなりの根拠があるのだと,理解することができました.

 精中委の精度管理を知って以来,消化管造影検査にもその手法を適用することは出来ないものかと模索していました.マンモグラフィで行なわれている精度管理の中で最も注目すべきことは,カテゴリー分類という,医師と技師の共通の言語が存在するという事実です.消化管の世界では,技師は読影という言葉を使用してはならないとか,診断名は不可とかさまざまな制約を強いられてきた歴史が,現在の混沌とした状況を招いた一因ではないかと思っています.話を精中委に戻します.その共通の言語を使用するための過程で放射線技師は,装置や自動現像機などのシビアな管理が要求されています.
乳腺の画像に要求される単位はまさに50 ミクロンの世界です.そうであるがゆえに焦点サイズや発生管電圧,線質などさまざまな機器管理,品質管理の項目の多さには驚くばかりです.
消化管造影検査について言えば,装置面ではそこまでのシビアさは必要ないと思いますが,その代わり,消化管造影検査に求められる一番の精度とは,まず何よりも目的とする胃のすべての区域が描出できていることだと思います.受検者の個人差に大きく左右される消化管造影検査の一番の問題点,不確かさはそこにあります.次には,描出されている粘膜は胃の性状を的確に現せているかどうか,ここで画像の質が決定付けされます.これらを評価することが真の精度管理であると思います.
カテゴリー分類に進む手前の段階で誰がその部分に責任を持つのか,マンモグラフィで行なわれている機器の詳細な部分に相当するのが,消化管では区域描出能であり,粘膜描出能ではないかと思います.

 先日三重で行なわれた日本消化器画像診断情報研究会のシンポジウムで胃の区域に関しては現在の77 区域は医師が大学で習わないので理解できない,もっと汎用的に出来ないかとの議論もありましたが,私たち大阪消化管撮影技術研究会が上梓した画像評価法でも謳っているように,区域描出については小彎の細分化を省略した63 区域で行なうべきだと考えます.
そして,その部分の精度管理を私たち放射線技師が責任を持って担うことで医師との分業も図れると考えます.8枚とか7枚とかの撮影法に振り回されるのではなく,あくまで胃の全域を描出できているかどうかで画像評価を行なうことが重要です.そのように考えると,消化管造影検査の精度管理の方向性が見えてくるのではないかと思うのです.そして,そこから医師との共通言語であるカテゴリーへと話を進めることが出来るように思います.

 いずれにしろ,もう時間がありません.一刻も早く,消化管造影検査の生き残りをかけて,精度管理委員会が渾身の力を振り絞って活動されることを期待致します.

 ますます厳しい医療業界ではありますが,どうか今後ともメーカー各位におかれましてはご支援,ご協力をお願いするとともに,諸先生方にはより一層のご指導,ご鞭撻をお願い申し上げます.



『確かさの追求』
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2005年10月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:板谷充子
みどり健康
管理センター










 患者様の立場で医療を考える組織であるNPO法人(ささえあい医療人権センターCOML)の方々と「画像診断の不確実性と限界」というテーマで話し合ったことがあります.数値で表示される検査データと違い,一般の方々から見て画像診断とは非常に専門性の高い分野と考えられているということ,だからこそ画像診断に対する責任は重いと,そのときに感じたことを思い出しました.画像を作る過程を考えると,消化管撮影はその中でもより特殊な分野と言えるのかもしれません.

 今,消化管造影検査は風前の灯…とさえ言われています.それは何故でしょうか.「不確実」だからでしょうか.「画像の不確実性」とは何を指して言われるのでしょう.画像を作る過程の技術,出来上がった画像の読影力,その両方が共にバランスよく発揮出来たときに,より確かな画像診断になるのではないでしょうか.消化管造影検査は確かに旧態然とした検査法ではありますが,検査数の減少は,単に被検者にも技術者にも辛い検査だからという理由ではないように思うのです.検査に対する信頼性が今,問われているのだと思います.

 8月例会では,まさしくその画像診断の確実性の追求とも言える,馬場先生の特別講演を拝聴致しました.二重造影法の長所と欠点を理解し弱点を補う検査技術を身につけること,読影の視点を少し変えることで現在の画像診断をさらに確実なものに出来るのではないかというお話は,バリウムスタディーの灯を消さないのだという馬場先生の強いお気持ちであると感じました.

 さて,検査の現場では如何でしょうか?検診(健診)だから,鎮痙剤がないから…「でも」「だって」と,私たちは口にしますが,検査を受ける受検者(患者様)は誰が撮影しようが,誰が読影しようが,胃の検査を受けたのだと思っておられます.その結果を無条件に信頼して下さっています.その信頼に応えることが出来るように消化管撮影に必要な知識を,撮影技術を,読影力を,高める以外にありません.その高い技術を最大限駆使し,一人一人の受検者を撮影することが確かな診断への一番の近道なのだと思います.

 最後になりましたが,今年の4月より,本田前会長の後任として会長に就任致しました.歴史ある研究会の維持発展のために努力する所存です.今日までご支援,ご協力を賜りました皆様方には今後も変わりませず,大阪消化管撮影技術研究会へのご指導とご支援をお願い申し上げます.


『就任の挨拶』
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2005年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:板谷充子
みどり健康
管理センター










 今年大阪消化管撮影技術研究会は創立20周年となりました。3月には記念特別講演や祝賀会を開催し、大勢の会員の方々にご参加頂きました。その節目の年に、本田会長から会長職を引き継ぐことになりました。

 本田先生は8年の任期中に大阪という一地方の研究会を全国に会員を持つ会に育てられました。短期セミナーには北は北海道から南は沖縄まで広く全国から会員の方々が参加して下さいます。先日、藤田胃腸科病院に本田先生をお尋ねして、いろいろなお仕事の引継ぎをして頂きました。そこで改めてわかったことは、インターネットをフルに活用し全国に瞬時にメッセージを発信できる新しいスタイルの会を構築するために、WEBや編集、財務、総務等の幹事さんたちがどれだけ見えないところで大変な作業をこなしていたかということでした。そしてその全てを統括してこられた本田先生に改めて感謝を申し上げます。本田先生、本当に長い間お疲れさまでしたそしてありがとうございました。今後は相談役として、私たちをご指導くださいますようにお願い致します。

 さて、消化管造影検査が一般の病院からどんどん少なくなり、健診の分野でも内視鏡とバリウム検査を選択性にしようという施設も増えてきました。しかし、全国で上部消化管の検診を受ける人数はそれほど減少しているわけではありません。その中で私たちが目指すものはEMRが可能な早期癌の発見です。進行癌で発見される場合に比べての経済的な負担は大変大きな差がありますし、自分の技術と知識がこれだけ発揮できる撮影の仕事も他にはないと思います。MRIやCTに比べなんだかスマートさに欠けると思われがちな検査ですが、これほど受診者とのコミュニケーションが取れる検査も他にはありません。研究会例会では従来の症例検討をベースに今後も活動を続けて 参ります。

 三代目はとかく頼りないといわれますが、その通りです。しかし、お二人の名会長の意思をついで、今後も消化管造影検査の精度向上に力を注いで行きたいと考えています。

皆様のご支援をお願い申し上げます。


『画像評価法』

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2004年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:本田幹雄
藤田胃腸科病院











     平成15年度のレクチャー&ディスカッションでは,新標準撮影法(8枚法)を毎月のテーマにとりあげて,撮影法毎に撮影上の問題点,注意点,工夫すべき点などを討議してきました.それは,単にこの8枚さえ撮っていれば,胃癌は本当に発見されるのか?を検証するためです.

     いみじくも答申では今後の課題として,撮影者の技量の向上(安全確保,透視撮影時の所見チェック),そして必要時の追加撮影が必要 であると述べられています.折りしも,昨年11月に大阪消化管撮影技術研究会の画像評価委員会の手により「実践 上部消化管造影臨床画像評価法」が金原出版より上売されました.平成2年12月13日に第一回の委員会を開催して以来,実に13年にわたって議論を尽くしてきた集大成ともいうべきものです.その間,平成11年1月にスクリーニング検査における「病変の拾い上げ」では,十分評価が可能であるとの判断から,本会より「上部消化管造影臨床画像評価法」冊子として刊行しました.

     しかし,懸案の病変描出能評価法は,客観性を追及すればするほど主観的要素は入りこんでくるのではないか等,議論は遅々として進まず一定の結論をみるのに更に4年の歳月を要しました.婦木委員長を始め画像評価委員緒氏のご努力に心から敬意を表したいと思います.本当にご苦労様でした.

     今や消化管造影検査の担い手は放射線技師と言っても過言ではありません.かつての撮影は技師,読影は医師という時代は過ぎて,読影からいまやレポートを書く時代へと変貌してきています.しかし,読影医の多くが読影レポートの提出を望んでいるに対し,これに応えている技師(施設)はまだまだ少ないのが現状です.これは,一体どうしたことでしょう?.

     画像評価法では病変の拾い上げから一歩進んで,病変の精緻な描出にも言及し,病変描出の評価基準を設けています.こうしたレポート作成にあたっても大いに役立つものと確信しています.

     大阪消化管撮影技術研究会は発足以来「一人でも多くの救命可能な癌の発見」をモットーにして,撮影技術の向上には,読影力の向上が不可欠であるとして毎月例会を開催し,来年度で20周年を迎えようとしています.この危機的な状況の中で,私たちが送り出した本書が消化管造影検査に携わる全ての人々の手にわたり,撮影法及び検査精度の向上に寄与し,胃癌の早期発見に結実することを願ってやみません.

     先行きの見えない経済状況ではありますが,どうか今後ともメーカー各位におかれましてはご支援,ご協力をお願いするとともに,諸先生方にはより一層のご指導,ご鞭撻を切にお願い申し上げます.



『一致団結』

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2003年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:本田幹雄
藤田胃腸科病院











     本号(会誌26号)は例会開催200 回記念特集号として編集されています.前回は会則制定10 周年を記念して第10号が特集号として発行されました.早いものでそれから既に8年の歳月が流れ,年表を作成しながら様々なことを懐かしく思い出しました.しかし,ここで思い出話に耽っている場合ではありません.この8年間で私たちを取り巻く環境は激変しました.上部消化管造影検査が激減しています.一方の内視鏡検査は本格的な電子内視鏡の時代を迎え,多くの病院で内視鏡的治療が盛んに行われるようになってきました.2 cm 以下の分化型癌が一応の基準となっていましたが,今や適応はどんどん拡大されてきています.

     昨年12 月に関東の技師の方々と意見交換をしましたが,大阪のみならず全国的な規模で同じような危機的状況にあることがわかりました.X線検査をこれ以上衰退させず,活性化させるには,今まで以上にルーチンX線検査の質的レベルの向上をめざすしかありません.本会が提唱する画像評価法はそのためのものです.4年前に冊子として発刊しましたが,おかげさまで当初の自費出版分はほぼ完売しました.懸案の病変描出能の評価法も完成し,区域描出能・粘膜描出能に加えた形で遅くとも11 月には金原出版社より出版の予定になっています.

     一方,下部消化管造影検査はどうでしょうか?これまで標準化なるものは存在しませんでしたが,昨秋本邦で初めて日本放射線技師会消化管画像研究会の注腸標準化研究会の手により「注腸X線検査の標準化」が上辞されました.標準化にあたっての基本理念は1.二次検査であること2.受検者を第一義とすること3.結果の標準化であること4.結果に基づく過程の標準化であること5.責任ある検査を実施すること,と謳われています.そして病変の検索基準を大きさ1 cm とし,大きさ1 cm 以上の大腸癌を見逃さない画像を提供すると示されています.5年前に「案」として提唱され,幾多の試練をくぐりぬけようやく正式版となりました.改訂にあたっては大変な苦労をされたことと思いますが,その熱意,努力に敬意を表したいと思います.この標準化が全国津々浦々まで普及し,検査精度の向上がはかられることを期待致します.

     消化管造影検査の担当は,もはや私たち放射線技師以外にはありえません.明確な基準をもち,検査精度の向上,撮影技術の向上を私たち自身の手で達成していかなくてはなりません.この危機的な状況を打開するにはこれまでの主義,主張や垣根を取り払って皆で力を合わせていく他に方策はありません.本会の目標とする「一人でも多くの救命可能な消化管癌の発見」を全国の消化管撮影に携わる仲間とともに,一致団結して取り組んでいくことが今後の使命です.

     最後になりましたが,どうか今後ともメーカー各位のご支援,ご協力とまた諸先生方にはよろしくご指導ご鞭撻の程お願い申し上げます.



『消化管検査のEBM』

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2002年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:本田幹雄
藤田胃腸科病院











      最近たて続けに,いわゆるスキルスの症例を2例経験しました.1例はある病院のドックで1年前に胃X線検査を受け,異常なしとされていました.もう1例は毎年のように上部内視鏡検査を受けており,半年前に異常なしと言われたそうですが,自覚症状があるため当院を受診し,内視鏡検査を受けました.見るも無残なスキルスでその後X線検査に廻ってきましたが,撮影をしながらなぜ?どうしてこんなことになったのかと考え込んでしまいました.


     早速1年前のX線写真を取り寄せて見ました.それは,本当に異常を指摘できないのかを,この目で確かめるためです.同じ過ちを犯す可能性は誰にでもあります.明日は我が身です.しかし取り寄せた写真にはちゃんとIIcが写っていました.ドックの写真ですから枚数も多い訳ではありません.おまけに肥満体でいかにも撮影しにくい体型でした.しかし,一コマのみならず,体位を変えた写真で最低4コマはそれと指摘できるものでした.見る人が見ればわかるという微妙な所見ではありませんでした.つまり基本的な読影をしていれば,容易に指摘できる所見です.


     毎月の症例検討会では繰り返し繰り返し,悪性の根拠はどこにあるのかを討論しています.ベテランが良性というとなんとなくその意見に引きずられてはいないでしょうか?いやそうではない,悪性だと根拠を幾つも挙げて反論できるでしょうか?しかもそれを自分の言葉で表現できるでしょうか?


     撮影は技師,読影は医師というのは現在では死語に等しい言葉です.撮影さえしていれば,後は医師の責任だと思っていては,この様な悲惨な結果を招いてしまいます.いま私たちが撮影を任されている以上,結果にも責任を持たねばなりません.撮影者は読影の勉強をしていなかったのでしょうか?技師が読影にも携わり,医師と技師とのコミュニケーションをとることが重要になってくることを認知して頂きたいと思います.


    いうまでもなく本会の目標とするところは,一人でも多くの救命可能な癌の発見です.形態学である以上,それには多くの症例を体験することが必要です.研究会に参加し,会場で目にした症例はしっかりと脳裡に焼きつけて下さい.ついこの間もこれとよく似た症例が提示されていたのにと残念に思いました.X線造影検査は過去の写真を振り返り,反省できる特長をもっています.画像評価をすれば一目瞭然です.内視鏡検査には不可能なことです.今盛んに医療界ではEBM(evidence based medicine)という言葉が流行っていますが,上部消化管検査のEBMはまさにX線検査にあります.「山を見,森を見,木や葉っぱを見る」検査であるという意味を今一度かみしめて頂きたいと思います.


     最後になりましたが,例会にご参加頂いている会員諸兄姉,日頃よりご指導を戴いております諸先生方,深刻な不況下にもかかわらず協賛を戴いているメーカー各位に厚くお礼申し上げます.今後ともよろしくご指導ご鞭撻の程お願い申し上げます.



『撮影のプロを目指せ』

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2001年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:本田幹雄
藤田胃腸科病院











     新年早々1月26日〜27日にかけて北海道札幌市で第13回日本消化管撮影研究大会が開催され,成功裡に幕を閉じました.これも偏に大会関係各位のご努力の賜物とあらためてお祝いの言葉を捧げると共に敬意を表したいと思います.渡邊一知大会長並びに高橋伸行実行委員長の優れたリーダーシップ,更にスタッフの皆さんの絶妙なチームワークがあったればこそだと思います.


      消化管撮影技術並びに検査精度の向上という理念を,後に続く後輩方に続けていくための踏み台になればとの思いを込めて「新世紀,新たなる飛躍を目指して!!」をテーマとして開催されたのですが,このことは同時に私たちにとっても永遠のテーマであります.最後の統括発言で市川平三郎先生が述べられた「消化管X線撮影のプロの道を確立して頂きたい.そして謙虚であってほしい」とのお言葉は深く印象に残りました.囲碁の例をあげてプロとアマチュアの違いをユーモアたっぷりにお話されたのですが,私たちが何をしなければいけないかをズバリ指摘されています.


     「撮影のプロ」とは自分が撮影した写真に責任を持つと言うことに他なりません.そのために何をしなければいけないか?大阪消化管撮影技術研究会はその発足より今日に至るまで一貫して読影力の向上をはかることが撮影技術の向上に不可欠であると主張してきました.「写った写真」と「写した写真」の違いを置き換えて考えてみると容易に理解できるでしょう.つまり透視下で病変を発見できなければ,それは結果的にたまたま「写った写真」にしかなりません.勿論それは胃の中をくまなく検査することができて初めて可能な訳ですが,画像評価法でいうところの区域描出能と粘膜描出能を向上させればそれで目的は達成されたとは言えません.いま一歩踏みこんで透視下で病変を発見し,大きさ,形,範囲,良悪性の鑑別,深達度がわかるほど十分に撮影されていればそれは「写した写真」と言えます.


      この「写した写真」が撮影できてこそはじめてプロと言えるでしょう.精密検査は既に病変の存在も指摘され,前処置が施され撮影は容易だと思われています.ルーチン検査で病変を確実に拾い上げるほうが大変で重要であることは言うまでもありません.しかし精密検査だからできると言って相対するように考えずに,少しでも精密検査に近い写真に近づける努力やその手法を積極的に取り入れ,創意工夫することのほうがより重要です.かつての前壁レリーフ法から前壁二重造影法へと撮影法が変化したのはまぎれもない事実です.病変描出技術の向上をはかることが今後ともX線検査が生き残るかどうかのキーポイントと言えます.


      最後になりましたが石の上にも3年と申します.会長に就任し丸3年を迎えることとなりました.これも偏に会員諸兄姉,日頃よりご指導を戴いております諸先生方,メーカー各位のご支援,ご協力の賜物と厚くお礼申し上げます.お蔭様で会誌22号は「学術刊行物」として認可された最初の記念すべき号としてお届けできるまでに成長しました.どうか今後ともよろしくご指導ご鞭撻の程お願い申し上げます.



『一人でも多くの救命可能な胃癌の発見』

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2000年4月1日
大阪消化管撮影
技術研究会

会長:本田幹雄
藤田胃腸科病院











     ”一人でも多くの救命可能な胃癌の発見”を掲げ1984年に大阪消化管撮影技術研究会は発足しました.以来,毎月例会を開催し本年4月で168回を迎えるに至りました.この間機関誌として「消化管撮影技術」を1990年に発行し,今号で20号の節目を迎えることになりました.これも偏に皆様方のご支援ご協力の賜物と深く感謝申し上げます.

     さて20号発行を契機とし全国の消化管検査に携わる医師・技師の皆様と交流を深めるためこの度ホームページを開設する運びとなりました.周知の如く昨今の電子内視鏡機器の飛躍的な進歩により上部消化管ルーチン検査は内視鏡検査に移行しているのが現状です.胃X線検査の衰退は,病院,施設検診,人間ドック,住民検診を問わず共通する問題であり,そこには間接撮影・直接撮影の区別はありません.更に医師によるX線検査離れも拍車をかけています.確かに内視鏡検査に比べX線検査に熟練するには多くの経験が必要であり,病変の発見や描出は撮影者個人の力量に左右されるのは事実です.

     大阪消化管撮影技術研究会はこの弱点を真正面から克服し,21世紀に向かい胃X線検査の担い手として邁進していく所存です.そのためには私たち自身が検査技術を向上させ,検査精度の向上を図らなければなりません.しかも全国的なレベルアップが急務です.

     何はさておき消化管X線検査精度の向上には臨床画像評価が不可欠です.大阪消化管撮影技術研究会が提唱する新しい「上部消化管臨床画像評価法」はその目的達成に最もふさわしい全国共通の「物差し」を提供していると考えます.多くの皆様にご紹介し実践して戴きたいと願っています.

     更に重要なことは撮影技術の向上には読影力の向上が不可欠であるという点です.会誌はその読影力の向上を目指して発行して参りましたが,より多くの皆様の目にふれ,読影力向上の一助にして戴けるよう毎月のレポートを限定ページに掲載していく所存です.

     全国各地の消化管X線検査に携わる皆様におかれましては,新しい交流の場の一つとして是非このホームページにお越し戴きますようお願い申し上げます.

    ”一人でも多くの救命可能な消化管癌の発見”を目指し共に手を携えて参りましょう!



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