特別講演

特 別 講 演


「組織特性からみた胃癌のX線診断」

早期胃癌検診協会
馬場 保昌 先生

司会 飯島クリニック院長 松尾 祥弘
大原総合病院放射線部 大類 幸悦



胃癌のX線的な診断法には,以下の4つの方法がある.すなわち,
 1)記憶画像との単純比較による診断:組織学的に胃癌と証明されているX線像をパターン認識として記憶し, これを基準に対象画像と単純に比較し,画像所見の類似性を求めて診断する.本法の特徴は,組織学的に胃癌と診断されて いればそれでよく,X線所見の肉眼的あるいは組織学的な成り立ちなどとは無関係に行なわれることである.

 2)X線・肉眼・組織所見の相互比較に基づく診断:胃癌個々についてX線所見,肉眼所見,病理組織所見を相互に比較し, 所見の成り立ちに診断根拠を求め,これに基づいて診断する方法である.相互比較は撮影手技と読影力を確かめるための 基本作業として重要である.しかし,相互関係から得られる所見は個々についであり,胃癌全体に関連性のあるX線診断の 指標や臨床診断の意義や目的が不明瞭になりやすい点で問題がある.

 3)癌組織型を基本とした系統的診断:癌組織型を基本に個々の所見を系統的に分析,整理して,系統的な診断指標に基づいて診断する. 癌組織型分類は中村の癌組織発生の概念を基盤とした分類,すなわち分化型癌と未分化型癌の2分類法を用いる. 胃癌個々の所見の成り立ちだけでなく,胃癌個々の関連性を把握することができる.

 4)胃癌の体系から眺めた診断:胃癌の組織発生の概念や理論を基盤とした胃癌の体系からX線診断を眺める方法である. その1つに中村の胃癌臨床診断の基本的な概念すなわち“胃癌の三角”がある.胃癌の三角とは癌発生の“場”と“組織型”と “肉眼型”の3つの要素が作る関係を指す.本概念は,いわば胃癌臨床診断の安全装置(fail-safe system)の役割を果としている.

 ここでは,前記3),4)に関連する胃癌の組織特性から胃癌のX線診断を眺め,診断指標を求める.